Part 3|小森恵・中川周・河端政勧

a means scattering ceremony
February 16[Tue]―20 [Sat], 2010


小森 恵



 
《30 color box》
1900×2100×762mm/MDF、2×4/会期中、パフォーマンスを公開



「30 color boxへ」

この作品については「パズルゲーム」の要素を踏まえた動的オブジェクトに見える。それは、あの有名な「テトリス」を思わせる形と色だ。「テトリス」の持つ数学性、動的性、並びに実装の平易性からプログラミングの題材とされるように、この作品は人の操作によって、見えない言語を交わしている。BOXと身体の行為は、ある1つのルールに従って機械的に制御し、束縛し合う。それは、そもそも人間も「肉体」という一つのBOXに収集され、制御されている事を思わせる。(M.K.)





中川 周




  《Cyperus flower》
インクジェットプリント/1485mm×1100mm




「flow focus 浮遊する焦点」

奇妙な臨場感がある。画面は、南国の植物の間に既知の植物が混在し、前景と後景に分割された構成になっている。だが、すべての植物にピントが合っているため、後景を見ていたはずの視点はいつしか前景へとまたはその逆へと導かれる。鑑賞者の視線は画面上をさまよい、空間そのものを飛び越えて広がっていく。
この作品のもつ広がりに包みこまれ揺らされる、その感覚こそが、奇妙な臨場感の正体であるかもしれない。(K.K.)





河端政勧






《影の陰影》
500×700mm(計2点)/水性ペン、鉛筆






一本の線から人は様々なものをその目に引き寄せる。
建築家のひく線は、一枚の壁を出現させ、家や都市へと展開され、
画家のひく線からは多様な自然の形象が象られ、生命の躍動が現れる。

「痕跡の観察」と題される河端の絵から容易に抽出されるのも、
このような形が生まれる予兆としての線である。
まず、河端の絵を眺めて気づくのは、往々に行き渡り、重なり合う細い線の束であり、
それが何かの輪郭線であるような様相で画面全面を覆っている。
その線の細部をみると、複数に色分けされ、層状に間隔をずらして描かれている。
そのズレた線群はどこか形の中心から逃れるように、運動してあるように見え、
また、乱視体験にも似た対象の不明瞭さを感じさせる。
しかしこの一見判然としない画像からどこか一定の秩序を感じさせるのは、
河端が「トレース(=跡をたどる、縁取る)」という技法を
「観察」という厳粛な態度で用いようとしているところによる。

ここで「トレース」しているのは、
制作中河端の目に飛び込んでくる、明るい部分と相対した影の輪郭である。
この影とは、まさに今描いている支持体自体の材質上できるヨレやしわ、
表面のテクスチャーなどによる影である。

しかし、もし仮に河端が本当に影のトレースを観察として試し見ていたとしたら、
観察の厳粛さを大きく曇らせないためにも、光源の移動、視点の移動など
影を中心とした周辺の諸条件を厳密に設定する必要がある。
この点で、河端の配慮は希薄であり、私には彼のもう少し違う対象への興味を感じざるを得ない。
その手がかりとなるのが、今回の展示期間中に河端が行った公開制作である。
そこでは、紙の上から壁面に移動して河端は展示壁面に落ちる影を「トレース」しており、
ひとつひとつの影を追う行為を淡々と重ねる身体のほうが一番に目に浮き上がってくる。
それはどこか自身の手や目の行いを確かめるようであり、
それ自体が観察の対象であり、トレースする対象であるように思えた。(S.N.)




[テキスト]  小森恵(K.K.)/中川周(S.N.)/河端政勧(M.K.)